下痢
便は消化管を通って人体に必要な成分を吸収しながら大腸に至ります。大腸では小腸までで消化しきれなかった栄養分やミネラルなどを吸収するとともに、余分な水分を吸収してある程度形を保った便を作ります。普通の便は、適度な水分を保ちながら、便器の中でもしっかりとした形を保っています。その際の水分含有量は70%前後になります。ところが、便の通過が早すぎて水分が吸収されなかったり、腸壁などの障害によって水分が吸収できなったりすると、軟便となり、便中の水分が90%を超えると液状の便となって下痢をおこします。
下痢の原因
下痢には急性のものと慢性のものがあります。
I. 急性下痢症
感染性下痢症
感染性の下痢には、赤痢菌、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、コレラ菌などの細菌性のものや、ノロウイルス、ロタウイルスなどウイルス性のものがあります。
非感染性下痢症
食べ過ぎ、飲み過ぎが多いのですが、その他にも食物アレルギーや薬剤、毒物などによるもの、冷えなどからくるものがあります。
II. 慢性下痢症
3週間以上下痢の症状が続くと、慢性下痢と診断されます。
消化管の疾患
炎症性腸疾患として、クローン病や潰瘍性大腸炎、膵臓疾患、過敏性腸症候群などの疾患のほか、牛乳でお腹がごろごろしてしまう乳糖不耐症、手術での胃切除の影響などがあります。
消化管以外の疾患
甲状腺機能亢進症や糖尿病などの全身性疾患でも下痢をおこすことがあります。
下痢による影響
腹部症状
腹痛、便意があるのに出ないしぶり腹、出してもまだ残っている感じがする残便感といった排便症状の他に、悪心(吐き気)や嘔吐、食欲不振、お腹がぐるぐると鳴ってしまうような腸ぜん動亢進などがおこります。
全身症状
発熱や倦怠感、栄養障害や電解質異常などがおこります。電解質異常では、便がアルカリ性となり、肛門周囲のただれがみられることもあります。また下痢によって水分を消失してしまい、脱水症状がおこることがあるため注意が必要です。
下痢の治療
まずは脱水症状をおこさないよう、水分補給を行います。症状が軽く、自分で飲むことが可能であれば、刺激とならないように、冷たくない飲料を、少しずつ時間をかけて飲むことが大切です。自分で飲むことができないような重症の場合は、入院して絶食・絶飲の上、点滴で水分補給を行います。
下痢の場合、原因となっている疾患を治すことが肝心です。感染性の下痢などは、下痢をおこすことによって、人体が中に入った病原体を追い出そうとしている結果のものです。もし、市販の下剤などで、無理に下痢を止めてしまうと却って感染が長引いてしまうこともあります。
一日3回以上トイレに通うような下痢症状が続くときは、迷わず消化器内科にご相談ください。