大腸ポリープ
大腸ポリープは腸管の表面の粘膜にできる良性の腫瘍です。いくつかの種類がありますが、大きくは、がん化する可能性があるものと、それ以外のものに分けられます。そのうち一番多いのは腺腫という種類のポリープでがん化の可能性があり「前がん病変」と考えられています。
好発部位は直腸からその手前のS状結腸あたりの比較的出口に近い部分で、大きさは2mmから2cm以上になるものまであります。
当院では、内視鏡検査で大腸ポリープをその場で切除する日帰り手術に対応しています。日帰り手術なので入院の必要もありません。
症状
ポリープがあっても、小さなうちはほとんど自覚症状がないことが多くいのですが、大きくなると、便の通路が狭まり、便秘や下痢、腹痛、血便などの症状がおこることがあります。しかし、まだ便が軟らかい状態の小腸に近い部分にできると、そういった症状が無いまま、大腸がんとなった後、リンパ節などに転移して初めて発見されることもあります。
定期健診などで行う便潜血検査は、その時たまたまポリープやがんなどから出血がおこった状態であれば便に混じった微量の血液から発見できることもあります。しかし、がん化しても進行するまで出血しないことも多いため、検査で陰性であったからといって安心できるものではありません。また、痔などによる出血で陽性となることもあります。
早期大腸がんの発見が
可能な唯一の検査
大腸カメラ検査は、肛門から直腸、結腸とたどり、小腸との接合部までの大腸全体をくまなく検査できます。それに加え、当院では、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医の資格を持つ医師が、最新の内視鏡システムを用いて、短時間のうちに小さな病変も見逃さず、詳細に観察することが可能です。ポリープやごく早期の大腸がんが見つかったときには、その場で切除してしまうことができますので、患者様の負担も大幅に低減します。
切除した組織は病理検査を行い、後日、検査結果をお伝えします。
早期発見・早期治療により将来のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を守ります
大腸がんの罹患者は、日本では人口10万人あたり男性は140人、女性は101人程度で、死亡率では女性では第1位、男性では第3位と、悪性新生物(がん)の統計でも上位にランクされており、現在も増加傾向にあると報告されています。
大腸がんは、初期の症状がほとんどなく、かなり進行してから発見されることが多くなっています。そのため、発見時には命にかかわる状態で、助かったとしてもその後の生活の質(QOL)を大きく低下させることになります。
しかし、現在の医学では、大腸がんは早期に発見し、適切な治療さえ行えば完治させることができます。また、ポリープの大部分を占める腺腫も見つけ次第切除してしまうことで、大腸がん予防につながります。
前がん病変のポリープや初期がんを見つけることができるのは大腸カメラ検査だけです。大腸がんの発症やポリープが増えてくる40歳になったら、定期的に大腸カメラ検査を受けましょう。
大腸ポリープ切除の特徴
大腸カメラは、直腸から小腸との接合部付近までの腸管の粘膜の状態を隅々まで観察できることに加えて、大腸内にポリープや初期のがんなどをみつけた場合、即時に切除したり、出血があった場合には止血を行ったりすることが可能です。
切除したポリープや採取した疑わしい組織などは、病理検査を行い、どのような疾患なのかを確定診断することもできます。別の日に再度予約をとって、前日からの食事制限や当日朝の下剤服用などの負担を一度で済ませることができ、患者様の負担が大きく低減します。
また、ポリープの多くは前がん病変ですから、その場で切除することによって、大腸がん予防につながります。
ただし、ポリープなどの切除をした場合、1週間程度は日常生活に制限があります。また、ポリープの数が多い、サイズが大きいなど日帰り手術では対応できない場合は、提携している入院設備の整った医療施設を紹介しております。
大腸ポリープ切除の手法
ポリペクトミー
スコープの鉗子口からワイヤー状の投げ縄のようなスネアというパーツを挿入します。それをポリープの茎の部分にかけて、高周波電流を通しポリープを焼き切ります。熱による止血効果もあり、大腸ポリープ切除では一般的な方法となっています。しかし、高周波の熱は粘膜より下層の組織も焼いてしまうため、後日出血や穿孔といった合併症をおこすリスクがあります。
コールドポリペクトミー
スネアをポリープの茎にかけるところまではポリペクトミーと同様ですが、その後高周波を使わず、スネアを引き絞ることでポリープをちぎるようにして切除します。合併症のリスクが低いため、当院ではこの方法を主にしています。切除時の出血は止血用の極小クリップで行います。
全周切開内視鏡的粘膜切除術(EMR)
平坦なポリープの場合、スネアをかける茎がありません。そのためポリープの下に生理食塩水を注入し、ポリープを浮かせて茎のような部分をつくります。そこにスネアをかけて、茎を締め付けながら高周波を流して茎部分を焼き切ってポリープを切除します。この時、ポリープ下部に注入した生理食塩水が緩衝剤の役割を果たし、高周波の熱は下部組織に伝わらず、安全に切除できます。20mm程度の比較的大きなポリープで行う手法で、ポリープ組織の一部が残ってしまうようなことがなく、一度で安全に切除できます。
切除後の注意点
ポリープの切除は、内視鏡検査中に終了します。しかし、日帰り手術という言葉にある通り、腸粘膜に手術創が残り、その部分からの出血など、合併症のおそれがありますので、術後しばらくの間は、いくつかの制限を守っていただく必要があります。
大腸カメラ検査では、その場でポリープ切除の手術がある可能性を考慮していただき、予定日の後1週間以内に出張予定などが入っている時はスケジュールを変更することなどをご検討ください。
ご帰宅後
検査が完了し、鎮静剤の効果が覚めましたら、医師から検査の結果をお伝えし、ご帰宅となります。当日は安静に過ごし、早めに就寝するようにしてください。
入浴
切除当日は、入浴は控えて、シャワーのみでお過ごしください。翌日からは入浴も可能になりますが、長時間の入浴は出血の要因となりますので、お風呂は短めにお済ませください。
食事
当日のお食事は、消化の良いものを心がけ、脂っこいものや香辛料などの刺激物は避けてください。
飲酒
術後数日から1-2週間程度で検診を行います。その際医師から許可がでるまではお控えください。
運動
腹筋を締めたり、前屈みになったりといった運動は腹圧がかかります。激しい運動は1週間程度、控えるようにしてください。ただし個々の患者様の回復状況や運動の種類などによって禁止期間は一定ではありませんので、必ず医師と相談の上運動を再開するようにしてください。
旅行・出張
乗り物で長時間座ったままの状態は、腹部に負担がかかります。また、飛行機は気圧の変化によってさらに負担がかかります。また移動する地域によっては、万一出血などがおこった際に手当が遅れる可能性もあります。最低でも術後1週間程度は出張や旅行を控えるようにしてください。